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みずのタイムトラベル城西編 紀行 12

こんにちは

これは2012年5月3日、6日、26日に行われた「建築家と巡る城下町みずのタイムトラベル城西編」の紀行文です。

前回は「アルモニービアン」について話しました。今回はそこからゴールの松本城公園へ向かい「松本城と北アルプスの眺望」を眺めましょう。

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 松本市立博物館の入口付近から視ることのできるこの風景。2000年には「都市景観100選」を受賞し、水準の高い都市空間として国土交通省から表彰されました。今では当たり前のこの風景も、多くの人の努力によって守られている風景であることをみなさんご存知でしょうか。
 松本城は永正元年(1504年)に築城されました。16世紀以降に石川氏によって整理された城下町計画は現在でも松本の都市形成に大きな影響を与えています。天守は現存する数少ない近世城郭として国宝にも指定され、明治維新後、松本駅が出来ると、市街地は次第にその方向へと拡大して行きます。1872年には天守が競売にかけられ解体の危機もありましたが、市川量造らの尽力によってその危機を逃れ、修復を繰り返しながら現在の姿に至ります。1980年代後半以降は、駅前地区開発によってかつての商業の中心であった城郭周辺は衰退し、それと同時に居住地域、商業地域も徐々に変化して行きました。
 市内からの山岳眺望を守ろうと、1940年には長野県が風致地区に指定しています(建物の高さは第1種地区8m、第2種地区15mに制限)。1950年代以降は住居形態の変化と共に松本城周辺にもマンションが建設されるようになりました。1972年、松本城西側に7階建てのマンションが建設され、市民の間で景観保護の重要性が認識されるようになります。松本市では同年「松本城景観保護審議会」を設置。翌年には、当時の東京大学都市工学部大谷研究室に専門的な調査を依頼し、いわゆる「大谷レポート」が作成されます。このレポートでは松本城内からの山岳眺望を重視し、北アルプスへは仰角2度以上、美ヶ原へは仰角3度以上の建築物は眺望を阻害するとされました。

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「松本城周辺整備調査報告書,S48年 東京大学工学部都市工学科大谷研究室」

それを踏まえて審議会は「松本城とその周辺の景観保護対策(建築物の高度規制を中心にして)」を審議して、1973年に松本市に答申しました。1974年、松本市が「松本城景観保護高さ規制」松本城周辺を地区分け、それぞれ高さの上限を設ける行政指導を導入しました。一方で、一部市民からは土地利用規制の緩和を求める声でも出始めます。

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「松本都市計画区域高度地区」

1986年、規制の内容を見直し、仰角による高さ制限に変更。3つの視点から仰角2.3度と15mの高さ制限とします。1988年には「都市景観形成モデル都市」に指定(建設省)。1992年には松本市都市景観条例の施行と都市景観審議会が設置されます。
 1999年11月、再び9階建てのマンション建設計画が持ち上がります。最高高さ15mの商業地区に31.5mのマンションを建てる計画でした。これは松本城天守(29.4m)を越えるもので、再び市民の間で反対運動が展開され、市が土地を購入しマンション建設を回避しました。今後同様の計画がでても山岳眺望を守れるようにと、市と住民で勉強会を開始。2001年3月、松本城周辺地区32.6haに高度地区を指定(建築物の絶対高さ制限を導入)の高さ制限を導入しました。

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「松本城周辺高度地区エリア図」

 その後、景観法の制定があり、市ではさらに様々な規制誘導を検討して松本城の山岳眺望を守っています。こうして北アルプスと松本城の景観は守られ、500年以上、周辺環境の変化はあれ、城西の美しい山岳眺望を眺めることが出来るのです。山の地下を浸透した水は、湧水となり私たちの生活を潤し、山に雪がふれば厳しい冬が近いことを、雪が溶ければ春が近いことを。山は私たちに季節の気配を感じさせてくれます。「大谷レポート」からちょうど40年。今年も、みずをテーマに「建築家と巡る城下町 みずのタイムトラベル城南編」を行います。さんぽをつうじて普段何気なく通り過ぎている風景に、ふとした発見や驚きをみつけ、日常がより彩り豊かになるきっかけになればと思います。是非、みなさんの参加を心よりお待ちしております。

[年表]
1972年 「松本城景観保護審議会」設置
1973年 「大谷レポート」が作成される。審議会は「松本城とその周辺の景観保護対策(建築物の高度規制 を中心にして)」を審議、松本市に答申
1974年 「松本城景観保護高さ規制」を導入
1986年 規制内容を仰角による高さ制限に変更
1988年 「都市景観形成モデル都市」に指定
1999年 11月マンション建設計画が持ち上がる
2001年 松本城周辺高度地区を指定


[参考文献]
松本市ホームページ
事例番号073 自然の躍動 文化の鼓動 人の輝き(長野県松本市),国土交通省 都市・地域整備局
松本城周辺整備調査報告書,東京大学工学部都市工学科大谷研究室,1973年
by mizunosanpo | 2013-02-08 11:27 | 2012旅行社みずのさんぽ

みずのタイムトラベル城西編 紀行 11

こんにちは

これは2012年5月3日、6日、26日に行われた「建築家と巡る城下町みずのタイムトラベル城西編」の紀行文です。

前回は「西総堀土塁公園」と「新井家の赤門・庭」について話しました。今回はそこから東へ、昭和に建てられ保存利用されている「アルモニービアン」へと向かいます。
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『アルモニービアン(旧日本勧業銀行松本支店)』

建築家
 「アルモニービアン」は1937年(昭和12年)に当時の日本勧業銀行松本支店(現・みずほ銀行)として建てられました。2003年(平成15年)に店舗統廃合に伴い売却方針が発表されます。松本市に対して保存要請があったものの財政難から市は購入を断念しました。しかしながら「旧勧銀ビルを守る市民の会」の保存運動によりレストラン・ブライダル施設に再生されました。
 建物全体を見渡すと、尖塔アーチ型の窓が7つ並ぶファサードが印象的です。キュビズム・バウハウスなどの着想源から1920年代パリで生まれ第二次大戦以前まで流行したアール・デコ様式の影響があります。アール・デコの代表的な建築としては東京都庭園美術館(旧・朝香宮邸/1933年)や伊勢丹新宿本店(1933年)があり、その幾何学モチーフや直線・流線形等の造形的な特徴があります。この建物は左右対称のファサードを持ち、直線と円弧の組み合わせからなる、極めて幾何学的な造形があります。建築家・藤森照信さん(茅野市出身)は、この開口部を著書『信州の西洋館』で、「松本城にいたる通りに生えた7本のつくし」と表現しています。尚、2007年には国の登録有形文化財に指定されています。


by mizunosanpo | 2013-02-03 19:10 | 2012旅行社みずのさんぽ


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